第74話

彼女は不安に駆られて廊下を駆け抜け、憂鬱な気分は消え去った。使用人たちは急いで彼女の前から身をよけた。その匂いは彼女をキャスピアンの執務室へと導き、ノックもせずに中に入ると、部屋にいる人物を見て足を止めた。

部屋の会話が止み、視線が彼女に向けられた。キャスピアンは机に座り、ジェイスは腕を組んで彼の後ろの壁に寄りかかっていた。彼の真剣な様子にアレクシアは心配になった。しかし、彼女のメイトの向かいに立っていた人物こそが、彼女を不安にさせたのだ。

王の前に立っていたのはルカだった。目の下のクマが疲れの証拠となっていた。彼の服や靴に付いた汚れも、彼が外で女神のみぞ知る何かをしていたことを示唆してい...