第10話

キャスピアンは舞踏会場に入る時、緊張していた。彼のメイトはここにいるはずだ、彼女はここにいなければならない、彼はそう願っていた。玉座へ歩きながら、彼女を探しに行かないよう自制しなければならなかった。彼の心臓は激しく鼓動していた。できるだけ短くスピーチを終わらせようと急いだ。

音楽が流れ始めると、彼はあの恋しかった香りを嗅いだ。イチゴとバニラの香り。部屋を見渡しても、その香りの発生源を特定することはできなかった。あまりにも多くの人々がいて、彼らの香りが混ざり合っていたからだ。

彼の目は、ある人物と合った。

バルコニーに、女神のように彼を見つめる彼女が立っていた。彼はほとんど膝をついてしまい...